本記事では、飲食店や精肉店など肉を仕入れる事業者に向けて、業務用の肉の主な仕入れ先と違い、ブロックとカット済み・国産と輸入の選び方、食肉卸を選ぶときに確認すること、取引の始め方、牛肉・豚肉を扱う店が知っておきたい法令を解説します。卸業者側にとってもどのように売れば良いのか?どう提案すべきかがわかる内容になっていますので、販路拡大方法についても紹介します。
業務用の肉の主な仕入れ先と違い
業務用の肉の主な仕入れ先は、次の6つです。
| 仕入れ先 | 買える量 | カットの指定 | 配送 | 価格・費用の傾向 | 向いている店 |
| 地域の食肉卸(食肉専門の問屋) | ブロックから小分けまで相談できる。量が少ないと取引できない場合もある | 厚さや用途に合わせた指定に応じてもらいやすい | 定期配送が中心 | 取引量・実績が増えるほど条件が出やすい | 肉の使用量が多い店、カットの指定が細かい店 |
| 市場の仲卸 | 仲卸ごとに異なる | 仲卸ごとに異なる | 市場へ買い出しに行く。配送に応じる仲卸もある | 市場の相場の影響を受けやすい | 市場が近く、肉を見て選びたい店 |
| 業務用食品の総合卸 | ケース・パック単位が中心 | 規格品が中心で、細かい指定は限られる | 肉以外の食材とまとめて配送 | 発注と受け取りを1社にまとめられる | 肉以外の食材も多く使い、発注の手間を減らしたい店 |
| 業務用スーパー・会員制の卸売店 | 1パックから買える | 売り場にある規格から選ぶ | なし(自分で買い出し) | 少量でも買えるが、買い出しの時間がかかる | 開業直後や使用量が少ない店、急な不足の補充 |
| 業務用食材のネット卸・通販 | 小ロットから注文できるサイトがある | 掲載されている規格から選ぶ | 宅配便(冷蔵・冷凍) | 価格を比べやすい。送料がかかる | 価格や規格を比べたい店、近くに卸がない店 |
| 生産者・加工業者から直接 | 相手ごとに異なる | 相手との相談による | 相手との調整による | 産地や生産者を打ち出せる。加工・配送の手配が自店側に増えることがある | 産地や生産者をメニューで打ち出したい店 |
市場の仲卸から仕入れる場合、市場の仕組みを知っておくと話が早く進みます。中央卸売市場の食肉市場では、牛や豚の枝肉(皮や頭、内臓などを除いた骨付きの大きな肉)がせりなどで取引されます。せりに参加できるのは、仲卸業者と、市場の開設者の承認を受けた売買参加者(東京都中央卸売市場では東京都知事の承認)です。飲食店が枝肉を直接買うことは基本なく、小売店や飲食店などの買出人は、仲卸業者から買うことになります。(参考:東京都中央卸売市場「市場で働く人々」/農林水産省「中央卸売市場における業務運営について」)
生産者から直接仕入れるといっても、牛や豚はと畜場で、鶏は食鳥処理場で処理されます。そのため実際には、生産者が加工・販売まで手がけている場合にその肉を買うか、生産者と契約し、食肉センターや加工業者を通して必要な形に加工して仕入れるかのどちらかになります。間に入る業者が減る分、仕入れ値を抑えられることがありますが、加工や配送の手配に加え、天候や飼育の状況による供給量の変動にも自店で備える必要があります。
ネット卸の場合、実物を見ずに買うことになるため、届いてから肉の状態を確かめる必要があります。また、卸や卸売サイトには事業者だけを対象とするものもあります(例:Mマートの買い手会員は、食材を仕入れる企業・店・団体が対象で、個人は登録できません)。
どの仕入れ先を選ぶ場合も、主な仕入れ先とは別に、ネット卸や業務用スーパーなど予備の卸先を決めておくことで、欠品や卸の休業日にもメニューを止めずに済みます。
また、開業前の店や個人事業主、キッチンカーの場合も、事業として仕入れるのであれば卸に取引を相談できます。ただし、取引を始めるときに営業許可や事業の内容を確認する卸業者もあり、条件は異なるので注意しましょう。卸先は決めたいがメニューが確定しておらず、使う部位や量がまだ決まっていない段階では、業務用スーパーやネット卸を活用して試作を経て部位と量を固めてから、卸に相談するとスムーズに取引ができます。
ブロックかカット済みか、国産か輸入かの選び方
「使える量あたりの単価」で比べる
飲食店や小規模な精肉店がブロックで仕入れる場合、買うのは主に部分肉(枝肉を部位ごとに分けた肉)です。ブロックはキロあたりの仕入れ単価がカット済みより下がり、店で切るため厚さや形を料理に合わせて決められたり、部位を生かした独自の商品やメニューも作れます。その一方で、肉を切り分ける技術を持つ人と、作業場所、冷蔵設備が必要です。
ブロックとカット済みを比べる際は、仕入れ単価だけでなく歩留まりを考えます。歩留まりとは、買った肉の重さのうち、筋や余分な脂、端材を除いて料理や商品に使える部分の割合です。仕入れ単価を歩留まりで割ると、使える肉1kgあたりの実質の単価が出ます。
例えば、仕入れ単価2,000円/kgのブロックで使える部分が8割なら、使える肉1kgあたりの単価は2,500円です。この単価とカット済みの単価を比べ、さらに切り分けにかかる従業員の時間をコストとして加えると、キロ単価で計算しても差がないこともあります。
ブロック仕入れが合うかは、端材の使い道があるかでも変わります。まかないやミンチ、煮込みなどにその部位を活用できる場合は、使える量が増え、実質の単価は下がります。
スライスや焼肉用、1人前ごとのポーションに加工されたカット済みの肉は、仕入れ単価は上がりますが、店で切る作業と端材の発生を減らせます。切り分けの技術を持つ人がいなくても扱えるため、アルバイトスタッフ中心の店でも仕込みを回しやすくなります。
国産と輸入をメニューの役割で使い分ける
国産か輸入かは、店全体で一律に決めるより、メニューの役割ごとに分けると判断しやすくなります。看板メニューや、精肉店のギフト商品のように、産地や銘柄を打ち出したい商品には国産(銘柄牛・銘柄豚など)を使います。日常使いのメニューや、ハンバーグ・メンチカツなどの惣菜、量が求められるメニューには、価格を抑えやすく、まとまった量を確保しやすい輸入肉を使います。
輸入肉の価格は、為替や輸出国の事情によって動きます。輸入肉を多く使うメニューは、価格が上がったときに国産や別の部位に切り替えられるか、あらかじめ考えておくと対応しやすくなります。
食肉卸を選ぶときに確認すること
品質の安定と欠品時の対応
肉は季節や相場によって品質や供給量が変わります。欲しい部位が欠品したときに同等の代替品を提案してもらえるか、欠品が分かった時点ですぐ連絡をもらえるか確認しましょう。欠品が続くと看板メニューを出せず、売り逃しにつながる事や、再来店の可能性を下げてしまいます。
発注ロット・配送の頻度と温度管理
単価を下げるために大きなロットで仕入れると、冷蔵庫・冷凍庫が埋まり、使い切れない肉の廃棄が出たり、支払いが先に出て資金繰りを圧迫します。店の使用量と保管できる量に合ったロットで発注できるかをきちんと確認しましょう。
配送に関しては、週に何回届くか、納品時間が仕込みに間に合うか、急な追加発注に応じてもらえるかを確認します。あわせて、冷蔵車・冷凍車で届くかなど、配送中の温度管理の方法も確認しましょう。
納品書・書類と、避けたほうがよい業者の特徴
納品書や規格書に、品名・部位、産地、重量などが書かれているかを確認します。国産牛の部分肉や精肉を仕入れる場合は、個体識別番号の伝え方も確認が必要です。
また、取引する卸業者を選ぶ際は、次のような業者は避けたほうが安全です。
- 相場より極端に安い価格を示す
- 国産牛の部分肉なのに、個体識別番号を伝えない
- 初回のサンプルだけ品質がよく、本発注から端材や脂の多い肉が混ざる
こうした問題を避けるためにも、納品時の検品を店の手順として決め、返品・交換の条件が取引前に書面で示されているか、担当者とすぐに連絡が取れるかを確認しておきます。
取引の始め方と、仕入れ条件をよくする付き合い方
卸業者と取引を始める手順は、基本的に以下のように進みます。
- 電話や問い合わせフォームで、業態、使いたい部位、月間の発注量、納品の頻度を伝える
- 担当者と商談し、価格表と配送条件(発注ロット、配送日、発注の締め時間など)をすり合わせる
- 少量で試し発注し、肉質と歩留まりを確かめる(ネット卸も、まず少量から試す)
- 問題がなければ、支払い条件(月末締め翌月末払いなど)を決めて取引口座を開設し、本格的な発注を始める
見積もりは、1社だけでなく、複数社に同じ条件(部位・量・配送条件)で依頼すると金額や納期などを比べやすくなります。ただし、他社の見積もりを盾にした過度な値引きの要求は、業者との関係を損ね、質の良い肉を回してもらいにくくなる場合もあるので注意しましょう。もし価格の相談をする際は、月にどの部位をどれくらい継続して買うかという意思を示すことで、仕入れの見通しを立てやすくなり、業者はその量に見合った単価を検討しやすくなります。支払い期日を守るなど取引するうえでの信用を積み重ねていくと、希少部位や特売品を案内してもらえる場合もあるので、長く付き合う可能性がある業者とは信頼関係の構築が重要になります。
牛肉・豚肉を扱う店が知っておきたい法令
肉を仕入れて販売・提供する事業者には、肉の種類や出し方に応じて守るルールがあります。ここでは、仕入れ先選びに関わるものに絞って整理します。
牛肉の個体識別番号
国内で飼養された牛には10桁の個体識別番号がつけられ、牛トレーサビリティ法により、牛肉がどの牛のものかを調べられる仕組みになっています。輸入牛肉や豚肉・鶏肉には、この番号はありません。
国産牛の枝肉・部分肉・精肉(特定牛肉)を販売する業者は、個体識別番号を容器や店舗の見やすい場所などに表示し、仕入れと販売の記録を帳簿に残す必要があります。※ひき肉、くず肉、舌や、牛肉を原料として加工・調理したものは対象外です。
焼き肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキ(特定料理)を主に提供する飲食店も、使う牛肉の個体識別番号を、店内のパネル、メニュー、料理に添える紙のいずれかで表示し、帳簿を備える必要があります。主として提供するかどうかは、仕入れ額または販売額の過半を占めるかで判断され、特定料理が一部のメニューにとどまる店は対象外です。ホルモン焼き、ユッケ、ローストビーフも対象外とされています。2026年9月にも、ステーキなどの特定料理で個体識別番号を表示していなかった飲食店に、農林水産省が勧告を行っています。国産牛の部分肉や精肉を仕入れる場合は、仕入れ先が個体識別番号を納品書などで漏れなく伝えてくれるかを、取引の前に確認しておきましょう。
参考:農林水産省「牛・牛肉のトレーサビリティ」/農林水産省「パック詰めの牛肉に書いてある個体識別番号とは何ですか。」
生食用の牛肉の基準と、牛レバー・豚肉の生食提供の禁止
ユッケや牛刺しなど、牛肉を生食用として販売・提供する場合は、2011年10月から、食品衛生法の規格基準に合った加工・調理が求められています。基準では、加工・調理の設備や方法のほか、4℃以下で保存することなどが決められています。
牛のレバーは2012年7月から、豚の肉・内臓は2015年6月12日から、生食用として販売・提供することが禁止されています。豚の肉・内臓は加熱用として販売・提供し、十分な加熱が必要であることを伝える必要があります。生食メニューを出す店は、生食用の基準に沿って加工された肉を扱える仕入れ先か、自店で基準どおりの加工・調理ができるかきちんと確認しましょう。
参考:東京都保健医療局「生食用食肉・牛肝臓の規格基準」/厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう」/厚生労働省「豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう」
食肉の保存温度と衛生管理
食品衛生法の規格基準では、食肉は10℃以下、細切りして凍結し容器包装に入れたものは−15℃以下で保存することになっています。また、2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCP(ハサップ:食中毒などの危害を防ぐための衛生管理の手法)に沿った衛生管理が求められています。納品時に肉の温度を測り、冷蔵庫・冷凍庫の温度とあわせて記録しておくと、こうした衛生管理の記録にも生かせます。
仕入れ先には、納品時の温度が基準の範囲に収まっているか、もし外れていた場合商品を交換してもらえるか確認しておきましょう。
精肉店・食肉加工業者が仕入れを生かして卸に広げる場合
この章は、ブロックで仕入れて自店で加工する精肉店・食肉加工業者向けの内容です。
ブロックで仕入れると、店頭でよく売れる部位と売れにくい部位が出ます。部位ごとに売り先がないと、端材や売れ残りが増えて歩留まりが下がり、まとめて仕入れる利点が生きません。そこで、部位や用途に合わせて買ってくれる業務用の売り先を持つと、仕入れ量を保ちやすくなります。飲食店やホテル、弁当事業者など、仕込みの手間を減らしたい店に売り込む場合、用途に合わせた厚さや1人前の量にカットして納品できることが提案材料になります。実際に業務卸を始める前に、以下の点を決める事で、提供できる商品が誰にとって必要な食材なのか?取引する事でどんなメリットがあるのか?が見えてきます。
- 対応できるカット・規格(スライスの厚さ、ポーションの重さなど)
- 最低発注量
- 配送エリアと配送の頻度
- 必要な許可(今の営業許可の範囲で業務卸ができるか、加工の内容によって別の許可が要るかを、管轄の保健所に確認する)
今まで取引のない業態へ案内する方法は様々ですが、人手や時間を削減したいと考える場合は、FAXを営業に活用する方法がおすすめです。実際に成果を出した食品メーカーや卸業者はすべて人手が足りない・営業マンが自社にいないと言う状態からスタートした企業がほとんどです。メーカー側が飲食店に提案して成果を出した紙面の紹介と、その他成功事例をお話している動画もございますので、是非活用ください。
営業担当のいないカット野菜加工会社が関西の食品メーカーへFAX営業|3,000件配信で当日13件の反応を獲得した事例
まとめ
業務用の肉の仕入れ先は、価格だけでなく、必要な量、欲しいカット、配送の条件で選びます。ブロックとカット済み商品の場合は、キロ単価ではなく、歩留まりを加えた使える量あたりの単価で比べると判断を誤りにくくなります。
まずは、メニューごとに使う部位と月の使用量、必要なカットや量を書き出し、そのうえで同じ条件で見積もりを依頼しつつ、少量の試し発注で肉質と歩留まりを確かめることから始めてみましょう。また、取り扱いに関する規則や法令も把握しておく事で、取引だけでなく、お客様へ提供する商品の安全性も保つことができます。
もし、精肉店・食肉加工業者で、業務卸の取引先を増やしたいものの営業に人を割けない場合は、テレアポやネットの活用などもありますが、人手や工数を割きながら作業中にも営業活動を進められる、FAX営業代行サービスのご利用もご検討ください。
米澤 俊一(よねざわ しゅんいち)
株式会社セールスマーケティングファーム代表
1979年横浜市出身。日本体育大学卒業。
IT企業で4年間Web運営に携わった後2008年に独立。
その後、福井県のベビーリーフ農家へ転身し、独自の営業手法を駆使してわずか2ヶ月でスーパー150店舗、レストラン400店舗との新規取引を開拓。ビニールハウス2棟から33棟への急拡大を牽引。OTAや農業ベンチャーの役員を経て、現在は営業職不在の中小企業を支援する営業代行会社の代表取締役。